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電子制御スロットルシステム(ドライブバイワイヤー)とは「はじめに」


2009-07-22


「このページは技術紹介資料です」

■ 電子制御スロットルシステム(ドライブ・バイ・ワイヤー)とは

 電子制御スロットルシステムとは、Drive-by-wire(ドライブバイワイヤ)、電子スロットル制御システム、電子制御スロットル、電スロ、とも呼ばれ、アクセルペダル(アクセル・スロットルレバー)とエンジンのスロットル間を電気的に接続して制御する機構のことを言う。

 機械的に接続する事が困難な 航空機 Fly-by-wire(フライバイワイヤ)や船舶などでは古くから採用されており、複数のセンサーと制御系統によるフェイルセイフ機能が完全であれば安全性が高いシステムである。

 一般的にステッパーモーター(ステッピングモーター)でコントロールされていると誤解される事が多いが、多くがDCブラシモーターによるフィードバック制御が採用されている。 これは、ステッピングモーターを使用する事によるコストアップ、故障率のアップ、制御系の複雑化、起動トルクや脱調の問題があるためと思われる。

 モーターに通電しない状態ではスロットルはフリーとなるが、バネによって若干スロットルが開いた状態で固定される。これは、安全に停車するまでの間、最低限のエンジン回転数を保つ事によって、ブレーキやパワーステアリング機構、電気系統などを維持するための機構である。

 センサーは、安全性の確保のため、ほとんどの場合アクセル、スロットル共に二系統化されている。 2つの特性を持つセンサーを別々に搭載することにより、ノイズやセンサー故障などに備えている。 また、ECUでセンサーの整合性をチェックすることで、さらに信頼性を確保している。(センサーの出力はワイドとナローや、逆転出力など各社によって様々な方法が採られている)


電子制御スロットルシステムの機能

 車、バイク共にガソリンエンジンの基本原理は同じである。
 ドライバー(ライダー)によるアクセルの開き具合を角度センサーで取得し、電気的に処理してスロットルモーターを動作してスロットルを開閉する。

 電気的に接続する事から、スロットルを制御するためにコントローラーが必要であり、多くはエンジンコントロールユニットECUの機能に含まれている。

 電子スロットル系統図


 現在では多くの車種で電子スロットルが採用されているが、これは以下のような利点による。

電子スロットル制御システムの利点

●構造がシンプルで部品点数の削減が可能
 アクセルワイヤーやダッシュポットなど、機械的で複雑な部品が不要であり軽量化とコストの低減が可能。
 スロットル開度を電気的に直接制御できるので、アイドルコントロールバルブ等が不要となる。
 構造が単純であることは、コストや重量、故障率から見ても有利である。

●エンジンのインタラクティブな制御が可能
 クルーズコントロール、トラクションコントロールなどが電気的に制御できる。
 トランスミッションの変速時や、アクセル操作に対して衝撃を低減したり滑らかな動作が可能となる。

●運転者の操作をアシストすることが可能
 アクセル操作に対して、平均化や制限をすることで燃費の向上が可能となる。
 不用意な操作に対して、制御することが可能。

 しかし、誰でも簡単に使える事を目標に設計されているため、特別な使用目的には適合しない点が多い。

 E-THM1.jpg
電子スロットルのカバーを開けたところ(トヨタ車)
(左がスロットル軸、中央が減速ギア、右がモーターで電磁クラッチが付いている)
注:すべてのスロットルが同様とは限らない

電子制御スロットルシステムの欠点

●一般的に動作が遅い(レスポンスが悪い)
 ドライバーの意志と異なる制御がなされるため、高度な運転技術者の意志がスロットルに反映されない。
 例: 出だしは鈍く、途中から急に加速するような特性を見せる事がある。
 これは、一定のアクセル開度まではスロットル開度を制限するが、素早いアクセル操作に対しては、より大きくスロットルを開くため。

●全開域からの急減速が困難な場合がある
 一定以上スロットルを開けた高速域から急減速する場合、アクセル開度が一定量開いたままになる場合がある。
 これにより負圧の発生が限られ、マスターバックによるブレーキアシスト力が不足する場合がある。

●制御が難しい
 電子スロットルの制御回路やセンサーに高度な技術が必要。
 制御系が人と機械のインターフェイスとなるために、人の意志と異なる動作となる場合が多く、違和感を減らすことが難しい。


 特にモータースポーツの世界では、市販車の電子スロットルの様々な問題点が指摘される。

 

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E-Throttle2.jpg

アクセルとスロットルの出力特性の対比


 この制御には、様々な理由がある。

 エンジンにはオーバーベンチュリと呼ばれる状態があり、回転数が十分でない状態でスロットルを開けると、吸入空気流速度が上がらないために充填効率が悪化する。 この回避のために、純正電子スロットルはコントロールユニット(以降:純正TCU) は、スロットル開度と回転数などから演算して、アクセルを開いたとしてもスロットル開度を制限している。

 つまり、スロットルが開かないのではなく、ラフなアクセル操作に対してもエンジンが効率よく回るようスロットルを開けないように制御しており、この制御ために、アクセルをあまり踏んでいない状態でも予想以上の加速をしたような違和感を覚える可能性が有る。 ※

 これらはエンジンの運転効率が上がっただけであり、通常の操作性や安全性には影響しない。


※ これは、ワイヤー式スロットルの車種で体験できるが、ある回転域(特に中低速域、中低回転)において、アクセルを全開にするよりハーフスロットルにした時の方が、体が引っ張られるような強い加速を体感する時がある。

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 この制御による効率の向上は、あくまで完全な純正の状態に限られ、吸排気系、例えばエアクリーナーやマフラーを変更しただけでもオーバーベンチュリの条件が変わるために、純正TCUによる演算は狂う結果となり逆にエンジンの効率は大幅に悪化することとなる。

  また、純正TCUはトルクの突出する領域なども、スロットル開度を制限してエンジンパワーを部分的に制限している。 さらに、ダッシュポット効果や余分な吸気を極力無くすようにプログラムされているため、全体的に動作速度をおさえている。 また燃費の向上のため、ラフなアクセル操作を平均化するように遅延している。

 
E-THM2.jpg 
電子制御スロットルを分解したところ (ニッサン車 75mmφ)
(左がスロットル軸、中央が減速ギア、右がモーター:電磁クラッチは無い)
注:すべてのスロットルが同様とは限らない


 純正TCUは、マフラーやエアクリーナーも変更されない完全なノーマル状態で本来の機能を発揮するように設計されている。
 エンジン出力は可能な限りフラットで、静粛性を高め、燃費が向上し、車体やミッションを保護し、同乗者に不快感を与えないような制御を目的とし、運転する人の年齢や技術水準を問わず快適な操作が可能になっている。


 このように、純正TUCは、速く走ることを目的としていない。
 ただし、車両の種類によって反応速度や動作速度の、いわゆる味付を変えている。
 これらが、電子スロットル反応遅れの主な原因であるが、競技で0.1秒の遅れは致命的である。

 競技ではドライバーの意志がエンジンに対して、いかに素早く反映されるかが重要である。
 これらの問題は、純正TCUを介している限り、スロットルに疑似信号を送るスロットルコントローラーでは解決しない。


この映像は、MLabo. ETMS を使用して単独で動作させたところです


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一般に電子スロットルの動作は低速と感じられるが、ハードウエアの動作は想像以上に早い。

下図は、口径75mmφの一般市販車で採用されている電子スロットルモーターに直接「電源DC12V」を正方向(開く方向)、続いて逆方向(閉じる方向)に接続した時のスロットルセンサーの出力波形である。

E-TH_on-off.jpg

 上昇中がスロットルの「開く」動作で、下降中はスロットルが「閉じる」動作をしている。
(上昇、下降後に衝突して跳ね返っている様子がわかる)


 矢印の地点で通電を開始しているが、

  • スロットルが全閉から全開までの全行程では、約60ms(0.06秒)で動作した。
  • 同様に、全開から全閉までも、約60ms(0.06秒)で閉じきった。


 このようにごく普通の電子スロットルボディでも、人の反応速度0.08秒(武術の達人の反応レベルと言われる)から0.2秒(一般人の反応レベルと言われる)を大きく上回る速度で動作することができる。

 しかもこれは「全閉から全開」までの全行程での時間であり、通常の使用領域は50%以下であることから、ハードウエアの追従速度は全く問題ないレベルである。


 これらのデータから、人の反応速度+アクセルペダルを操作する足の動作可能な最大速度と言われる約0.2秒も加えると、どのようなドライバーでも体感として動作の後れを感じる事は無いと言える。

 つまり、電子制御スロットルでも、ワイヤーによる直結式スロットルと比べ何ら変わらない動作が可能であると結論づけられる。


 これらの計測結果から、動作遅れや意志と異なる動作は電子スロットル1 電子スロットル2  のように、制御系統のプログラムによって決められていると言うことが判る。

E-Throttle1.jpg



この映像は、MLabo. ETMS を使用して単独で動作させたところです




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